はじめに
Network Controllability系の論文に出てくる量の「気持ち」を理解するために、導出を追ってみました。
問題設定
離散的なlinear time invariant systemを考える。
Aはノード数nの有向グラフの接続行列を表し、control nodes setをとした時にとする。
をシステムの状態、を入力信号とする。
この系において状態の始状態を, 終状態をとした時にとなるような入力列を求めることを考える。
Controllability Gramian
そのようなが存在するための必要十分条件は次の可制御性行列
の階数がであることである。
次に具体的なを求める。(1)より、
がランク落ちしていないためこれを満たすは存在するがより方程式は不定となる。
そこでが最小となるノルム最小解を求めることを考える。
ここで、Contrllability Gramianを次のように定義する。
天下り式になるが、射影行列を導入すると(2)を満たす任意のについてになることが次のように示される。
まず、
よりは(2)を満たす。
次にノルムが最小になることについて。
、
に注意して、
ここで、
より、
が成立することからはノルム最小解になる。
なお、一時刻ごとのの値はと書ける。
なお、Controllability Gramianについて、
から半正定値であることが分かるが、が正則であるため
より正定値。
Control Energy
を単位超球面上の点に制限した時()、をControl Energyとする。
Control Energyについて次のことが分かる。
なお、一つ目の等式は(3)に基づき、2つめの不等式は の直交変換を行えば成り立つことが分かる。
これよりControllability Gramianの最小固有値はnetwork controllabilityの指標として採用されることがあり、そこでは「最もエネルギーが必要な終状態(=最も悪いケース)を実現するために必要になるエネルギー」という考え方に基づいて定義されている。
Average Energy, Average Controllability
一方、に到達させるために必要なエネルギーの平均をnetwork controllabilityの指標として採用する場合も考えられる。この時はという条件下でのの期待値を考え、これをAverage Energyと呼ぶ。
に注意して、
より、Average ControllabilityはControllability Gramianの逆行列のトレースとなる。
ただし、は計算が安定しなく、また以下の不等式によりによって下から押さえられるため、Danielle S. BassettらはをAverage Controllabilityとしてnetwork controllabilityの指標(の一つ)にしている。
より、